さらば夢想の日々

脳をフル回転させ言うとんねん

駄文

勃つ

▼空を高く感じる、晴れた秋の日。僕はとある講堂の座席に座っていた。ざっと数百名は難なく収容できるくらいに広く、どこか荘厳さがある講堂。その中の客席はほぼ全て人で埋まっている。そこに座っている観客たちは老若男女、様々だった。 やがて、ステージ…

襲う

▼「飯塚幸三! 飯塚幸三、見てるかァーッ」 半狂乱になりながら自転車のペダルをキコキコと漕ぐ。真っ赤な顔で、キモいくらい大量の汗を滴らせ、必死にママチャリを漕いでいる男性。他人の目からはそう映っているであろう俺の姿がどれだけキモかろうが、構って…

人間に向いていない

▼ その日は何となく、揚げ物が食べたい気分だった。 自宅からほど近い場所にあるやよい軒にて黙々と唐揚げ定食を食べていると、それぞれ隣り合って座っている、二組の家族が僕の視界に入った。 片方の家族は、スーツを着た精悍な顔立ちをしている男性と、小…

知る

▼『君は凡庸な人間なんだよ』と誰かが言った。 凡庸。平凡で、優れた点がないこと。またはその人。 「違う」と僕は言い返した。誰かとは、彼のことだ。そしてその彼とは、僕のことだ。もちろん、僕という人間がこの世界にふたりも存在していて、お互いに向か…

暮れる

▼目を覚まして時計を見ると、時刻はもう夕方だった。昼寝のつもりが、どうやら本格的に眠りについていてしまったようだ。何度か瞬きをして、重い目を擦る。色褪せたカーテンの隙間から漏れる夕陽に照らされて、僕の部屋はほんのりと朱く染まっていた。二度寝…

潰れる

▼目の前に見知った顔の人が座っていた。会ったことはないけど、俺はこの人の顔を知っている。誰だっけ。最近もニュース番組で見た記憶がある。ああ、思い出した。日大アメフト部の監督をしていた内田正人さんだ。椅子に座ったまま、初対面のはずの俺になぜか…